まず、今回このセルフカバー・アルバム『FLOMA』を作る事になったきっかけからお話しすると…。
昨年暮れに数10年ぶりのオリジナル・アルバム『トキサカシマ』をリリースした後、松武さんから「今迄の和風3部作(古い曲から順に“お祭り”、“さても天晴 夢桜”、“恋はからげし夏の宵”)のミニ・アルバムを作らないか」という案が出まして。作るにあたっては、3曲のBPM(テンポ)を同じにし、アレンジもアップデートして3曲繋げて聴けるようにしたら面白いのでは、というように企画が始まりました。そしてその打ち合わせと並行して、今後の私のライブに関する事も話し合っていくうちに、「それにつけても以前のアレンジでライブをするのはやはり色々な面で無理があるし…、ならばこの機会に過去3枚のアルバムから他の曲も新たなアレンジでレコーディングしてはどうか?」という話の展開に。具体的には1stアルバム『夢飛行』、2ndアルバム『NIRVANA』、3rdアルバム『月姫』それぞれから3曲ずつカバーすることになりました。
私も最初は結構気楽な気持ちで決めたのでしたが、いざアレンジを始めたところ、かなりの艱難辛苦(苦笑)を極めました!まずは選曲に悩み、次はどの方向にリアレンジするか(オリジナル曲には私が本録音の前にデモテープに入れていたフレーズが多々使われていたので、それをどう処理するか等)に悩み…。更に、「自分がその時どういう情景をイメージしてその歌詞を書いたのか?」という記憶も、やはり長い時の経過と共に薄れており、それを思い出すのにも少し時間が必要でした。私は詞の情景からアレンジを膨らませる事が多いので、それは大切な作業なのです。そして、約3か月間試行錯誤を繰り返しながら、ここに『FLOMA』を完成させることができました。
自分の3枚のアルバムから選んだ9曲のカバーと共に、今回は私が過去に作曲家として他のアーティストの方々に提供した作品の中からの3曲もカバーしてボーナス・トラックとして加えました。
詳しいことはまた曲解説のほうで。では、ようこそ“FLOMA”の世界へ。
山口 美央子
1. さても天晴 夢桜 new ver. (『月姫』より)
和風三部作のうちの1曲。よってテンポは上げました。オリジナルのアレンジがリズム主体だったので今回はフレーズを増やすことで絢爛豪華を意図しました。艶やかな桜から歌舞伎の「義経千本桜」を想起。舞台は鎌倉時代、平家の生き残りの武士と遊女の物語。琵琶の音~声明~追っ手の馬~刀剣乱舞へ。刀の音をうまくリズムとして使うのはかなり難関でしたが、松武さんのシンセによって、非常に凛々しく世界観を作り出せました。
2. 白昼夢 new ver. (『月姫』より)
アルバム『月姫』の中でも特にたくさんの方に愛して頂いた曲なので、とても丁寧に作りたかったです。アンビエントにする事は決めていて、揺らぎのあるランダムなシンセ音(“HIKARI”と名付けました)を主体にアレンジしていきました。神の光、そしてこの世で一番美しいものを想像して聴いて貰えたら。
3. 月姫 (MOON-LIGHT PRINCESS) new ver. (『月姫』より)
最初アップテンポにしようとしましたが、そうするとどうしてもオリジナルにあった土屋(昌巳)さんのギターが頭の中で聴こえてきてしまい…。これでは変わったということにはならないのでは?と悩んだ末、この曲自体が静かな夜を舞台にしているということもあって、方向性をピアノの弾き語りに変更しました。間奏では月の光の満ち欠けを描きました。そして月姫からの信号も…。
4. いつも宝物 宝島ver. (『NIRVANA』より)
歌詞をオリジナルから変えました。年齢もありますし、前のままではやはり歌えないかと思い…。『NIRVANA』というアルバムはかなり性急に作った記憶があり、私の中でもやり残したことが多かったのです。そしてこの曲に関してはずっとやってみたかったシンセ・ポップを私なりに突き詰めてみました。新たにメロディーも加えてあります。ボコーダーの可愛さ満載で、このまま宝島に行けたらいいなと(笑
5. NIRVANA new ver. (『NIRVANA』より)
舞台は中東でも西洋でもなく、架空の都市。やはり“NIRVANA(涅槃)”なのでエスニックなアレンジを意識しました。きっとどこかにある桃源郷への旅。砂塵のゆらめき、キャラバンなど、音的にも物語に出来たと思います。今回改めて歌詞を見ましたが、現在の私にもしっくり来る歌詞で、この曲がリリースされた21歳の頃から自分が使う言葉や好きな世界が変わっていないという事実に愕然とした曲でもあります。
6. チャンキー・ツアー NEW YORK ver. (『NIRVANA』より)
このチャンキーという言葉は造語で尊敬する細野晴臣さんが作られたもの。この曲も元々は細野さんを意識して作った曲なので、憧れも込めてアレンジは『泰安洋行』を意識しました。歌詞も話の流れ自体はオリジナルと似つつも場所をNYに変えて。だからではないですがラップの部分も作りました。イントロと2番に聴こえる甘いストリングスは「南太平洋」(昔の映画です)のようにして下さいと松武さんにお願いしました。ベンドするストリングス音は作るのが大変とのことでしたが、さすがの手腕!により、美しく鳴っています。その辺も聴いてみてくださいね
7. いつかゆられて遠い国 new ver. (『夢飛行』より)
この曲はテンポを上げてダンス・チューンにする、ということは決めていました。実はこのアレンジに取り掛かった時期は、それまでに仕上げた曲がかなり濃い目の出来上がりのものばかりで個人的にも軽い気分のものが聴きたくて、敢えて音は少なくループのリズムをメインに作りました。全体の音感は、NY(のつもり)系 + 80年代ダンス。シンセのフレーズはオリジナルに近い音に。
8. お祭り new ver. (『夢飛行』より)
このアルバムで一番初めに取りかかった曲です。和風三部作の1曲なので、テンポは上げました。この曲は日本のお祭りが舞台の話ではありますが、歌詞にはダブルミーニングで、冷たい男を殺めてしまう=お祭り、というのを入れてあります。当時は多感だったので…。そういう訳で、単に明るいお祭りではなく、妖気を含んだお祭りにしたく、シンセの音にもその辺りをお願いしました。イメージは江戸時代、花魁道中、金魚売り、赤と金の世界。間奏は、どこの国ともわからぬ太鼓バトルとしました(ループでラテンもいます)。
9. 夢飛行 new ver. (『夢飛行』より)
私のデビュー曲で中学の時に作った曲。何度も出てくるイントロのフレーズをシーケンス・パターンにして、あとの部分もほとんどをシーケンスの繰り返しで作ってみました。かなり実験的でしたが、一度こういうアレンジをしてみたく。シンセの音選びに悩んだ曲でしたが、結果面白いものになったのではと思います。曲の最後の部分ではデビュー・コンサートで歌った時のことなどが思い出され、やはりデビュー曲は遠くて甘い夢に連れて行ってくれるものだと感慨深かったですね。
10. 夢飛行 A DREAM OF CANADEON ver. (『夢飛行』より)
「CANADEON」は、日本で最近開発された世界で初めてのMIDIオルゴールです。今回初めてレコーディングで使用しました。曲は『夢飛行』、オリジナルに近いバージョンで。数オクターブが出る夢のオルゴールで音を奏でてみました。
<ボーナス・トラック>
ここからは私が作曲家として参加した提供曲のカバーになります。曲を選ぶにあたっては、ファンの皆様から様々なリクエストを頂き嬉しい限りでしたが、やはり初めての試みでもあるので、今回はまず私の声で歌いやすいものをと3曲選ばせてもらいました。
11. ジェーンバーキンのように泣けばいい
これは川越美和さんに書いた曲で、作詞家の松井五郎さんプロデュースの同タイトル・アルバムに収録。アルバム全体がフレンチシックにまとめられていて間違いなく名盤だと思います。私は当時、まさにジェーン・バーキンやクローデイーヌ・ロンジェの辺りに傾倒していて、このアルバムの仕事はとても楽しかった記憶が。今回この曲をカバーするにあたっては、オリジナルがお洒落なシンセ・サウンドだったので、それとは逆に音数は少なくボサノバでラウンジ・ミュージックの方向でアレンジしてみました。昔懐かしいリズム・ボックスを使用しています。
12. Recede ~遠ざかりゆく想い~
鈴木雅之さんに書いた曲でシングル。私は男性アーティストの方々にも割と曲を書かせて頂いていて、今回1曲だけはその中から選びたいと思っていました。切ないバラードです。この曲のアレンジは、実は当時作ったデモテープが自宅のMDテープの中に残っていて(古いので凄いノイズ音でしたが…)、それに近いアレンジにしてみました。マーチンさんの歌唱力には改めて感心させられましたが、やはり自分の曲だと歌いやすいのか、意外とすっきり歌えた事には嬉しい驚きがありました。
13. 終りの気配
斉藤由貴さんに書いた曲で、アルバム『PANT』の最初の曲。当時色々とお仕事を頂いていた由貴さんのプロデューサーの方にある日「由貴ちゃんの書いた詞があるんですが、曲を書いてみませんか?」と数編の詞を見せて頂いたのですが、実は初めてこの詞を見たその時にサビのメロディーは浮かんでいました。ですので、この「終りの気配」の詞を頂いた後、家でわりとすぐに曲の全体像が見えた記憶があります。歌い方はウィスパーで。オリジナルのアレンジャーの方が私のデモテープのフレーズを結構採用して下さったので、今回のカバーはオリジナルに近い雰囲気です。ただ、特にこの詞が持っている“聖なる感じ”は意識してアレンジをしました。
2018年に本格的に活動を再開し、『月姫』以来となる4枚目のオリジナル・アルバム『トキサカシマ』を今年初めにリリースした山口美央子が早くも新作を発表!
本アルバムは、自身の1stアルバム『夢飛行』、2ndアルバム『NIRVANA』、3rdアルバム『月姫』、そして作曲家としての提供曲の中からそれぞれ3曲ずつをセレクトし、自らリアレンジしたセルフ・カバー集。
瑞々しい感覚で新たな彩りを加え、独特の世界観を更に突き詰めることによって別の姿へと鮮やかに生まれ変わった全13曲を収録。
9月からはリリース・ツアーも開催!!!
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ARTIST: 山口美央子 | Mioko Yamaguchi
TITLE: フローマ | FLOMA
レーベル: pinewaves
Cat No: PW-08
Produced by Mioko Yamaguchi and Logic System
All songs arranged by Mioko Yamaguchi
Keyboards: Mioko Yamaguchi
Synthesizer Programming: Hideki Matsutake
CD(価格: 3,000円 + 税)
■LOGIC STORE 先行販売: 2019年7月20日(土)
LOGIC STORE / for customers in Japan(国内版)
LOGIC STORE / for overseas customers(海外版)
■一般発売: 2019年8月10日(土)
ハイレゾ配信: 2019年7月20日(土)~
■e-onkyo music
以下のサイトではデータの差し替えを行っておりますので、配信日の7月20日(土)~7月30日(火)午前8時までの間にご購入頂いた方はお手数ですが、購入されたサイトにて再ダウンロードして頂けますようお願い致します。
mora / music.jp / mysound / OTOTOY / レコチョク
一般配信: 2019年7月27日(土)~
<TRACKLISTING>
01. さても天晴 夢桜 new ver.
02. 白昼夢 new ver.
03. 月姫 (MOON-LIGHT PRINCESS) new ver.
04. いつも宝物 宝島ver.
05. NIRVANA new ver.
06. チャンキー・ツアー NEW YORK ver.
07. いつかゆられて遠い国 new ver.
08. お祭り new ver.
09. 夢飛行 new ver.
10. 夢飛行 A DREAM OF CANADEON ver.
– Bonus Tracks
11. ジェーンバーキンのように泣けばいい | 川越美和
12. Recede ~遠ざかりゆく想い~ | 鈴木雅之
13. 終りの気配 | 斉藤由貴
<TRACKLISTING>
01. Satemo Appare Yumezakura new ver.
02. Hakuchumu new ver.
03. Tsukihime (MOON-LIGHT PRINCESS) new ver.
04. Itsumo Takaramono Takarajima ver.
05. NIRVANA new ver.
06. Chanky Tour NEW YORK ver.
07. Itsuka Yurarete Tōi Kuni new ver.
08. Omatsuri new ver.
09. Yume Hiko new ver.
10. Yume Hiko A DREAM OF CANADEON ver.
– Bonus Tracks
11. Jane Barkin no You ni Nakebaii | Miwa Kawagoe
12. Recede (Tōzakari Yuku Omoi) | Masayuki Suzuki
13. Owari no Kehai | Yuki Saito
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前作『トキサカシマ』の「恋はからげし夏の宵 / Ton-Ten-Syan」で完結を迎えた”和風三部作”。そのひとつである「さても天晴 夢桜」が絢爛豪華に変貌を遂げてオープニングをきらびやかに飾る。琵琶、琴、刀剣、声明、馬の駆ける音など、効果的に配された音色がストーリーを驚くほど具現化し、緊迫感を演出。
日本産アンビエント・ポップとして海外からも人気の高い「白昼夢」は更なる美しさと静謐感を纏ったアンビエントへと深化。穏やかな光のようなシンセの音が恍惚の空間を作り上げ、聴く者を徐々にそして確実に包み込んでいく。
「月姫 (MOON-LIGHT PRINCESS)」は情感込められたピアノとチェロの交差が胸に響くバラードと生まれ変わり、メランコリックかつ幻想的な世界を描き出す。
歌詞を”今”に合わせてアップデートした「いつも宝物 宝島ver.」はどこか異次元な雰囲気を醸し出しながら、近未来を浮遊する洗練されたポップスとなっている。
そして、アラブ~エスニックのリズムとメロディー、印象的な笛の音が摩訶不思議な世界へと誘う「NIRVANA new ver.」。異国情緒溢れる空気感とマリンバの音色が懐かしさと温かさを漂わせる「チャンキー・ツアー NEW YORK ver.」。軽やかながらもスケール感あふれるシンセ・サウンドとしなやかなグルーヴがどこまでも心地良いダンス・チューン「いつかゆられて遠い国 new ver.」。
“和風三部作” のもうひとつ「お祭り」は”妖気” をコンセプトに太鼓と琴をフィーチャー、祭囃子とシンセをダイナミックに融合した独自のテクノへと姿を変えた。
ラストはシンセとピアノが厳かで神秘的な「夢飛行 new ver.」から、世界初のMIDIオルゴール”CANADEON”を使用した「夢飛行 A DREAM OF CANADEON ver.」へと続き、本編は静かに終りを告げる。
FLOMA Tour in Tokyo
会場: 南青山MANDALA
日時: 9月19日(木) 開場18:30 / 開演19:30
出演: 山口美央子 / 松武秀樹
料金: 前売り 3,800円 +1ドリンク / 当日 4,300円 +1ドリンク
チケット販売: LivePocket 7月27日(土)正午12時~
*購入後の払い戻しは出来ません。
*会場到着順のご入場となりますので、予めご了承下さい。
企画・制作: pinewaves
FLOMA Tour in Nagoya
会場: Live & Lounge Vio
日時: 9月20日(金) 開場19:00 / 開演19:30
出演: 山口美央子 / 松武秀樹
料金: 前売り 3,800円 +1ドリンク / 当日 4,300円 +1ドリンク
チケット販売: LOGIC STORE 7月27日(土)正午12時~
*購入後の払い戻しは出来ません。
*会場到着順のご入場となりますので、予めご了承下さい。
企画・制作: pinewaves
FLOMA Tour in Kyoto
会場: UrBANGUILD
日時: 9月21日(土) 開場18:30 / 開演19:00
出演: 山口美央子 / 松武秀樹
料金: 前売り 3,800円 +1ドリンク / 当日 4,300円 +1ドリンク
チケット販売: LOGIC STORE 7月27日(土)正午12時~
*購入後の払い戻しは出来ません。
*会場到着順のご入場となりますので、予めご了承下さい。
企画・制作: pinewaves